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暴力という名の愛


以前も少し書いたことがあるがフルコンタクト空手業界(?)には十人組手という風習がある。

通常の昇級審査は茶帯以下同士でインターバルを挟みながら2回ないしは3回の対戦を行う。
コレが黒帯取得時とそれ以降になると、昇級/昇段が掛かった者たちが連続で10人掛かってくることになる。
(受験者の年齢を加味して多少人数が減ったりはする)

だが団体によって、合格基準は異なる。
因みに途中でKOされず10人完遂したら合格、という団体が多いようだ。

しかし数ある団体の中でも、大道塾の昇段基準は最も厳しいのではなかろうか。
その合格基準はシンプル。
半数以上の勝ち点を取れ、というもの。

オレは芦原会館と大道塾の両方で黒帯取得時に昇段審査を受けた。
だが大道塾の方が遥かにしんどかったように思う。


トラウマになるかもしれないと思った程だ(笑) 。


最初に大道塾の昇段審査を見たのは確か94年。
8人目かそこらで立てなくなった受験者が、流血しながら泣いて悔しがっている光景は壮絶ですらあった。
大体相手もこの日に向けて万全の調整をし、昇級/昇段を賭して掛かってくる。
自分を倒せば昇級/昇段する連中が、連続で10人。


正に悪夢。


つか、こんなんスーパーサイヤ人でもない限り受かる訳がない。


と、そのときは思った。

友人だと思っていた道場生が「ぐおりゃあああああ!!!!」と雄叫びを上げながら突進してくる。
想像しただけで、ありがたくて涙が出そうだ。



芦原会館で黒帯を取ったのは20年近く前。
正直、あまり詳細は覚えていない。
まだ先代館長が直接審査を見ていた時代だ。

根性試しの通過儀礼というよりは、何人も捌かせて、その人の技術レベルをチェックする。
そんな感じだったように記憶している。
当時は芦原館長自身が、受験者の技術レベルを判断して帯を出していたので、飛び級も多かった。
オレも何度か飛び級して、比較的短期間で黒帯になった。
しんどかったのかもしれないが、あまり良く覚えていない。

館長が三白眼で睨んでいる為、緊張感は半端じゃなかったが。


という訳で、黒帯を取得したときの感激度という点では大道塾の方が大きかった気がする。
それは修羅場を乗り越えた充足感とでも言うべきか。



これはどちらが良い悪い、というのではなく、団体の理念の違いだろう。

芦原会館の黒帯は、芦原カラテの「技術」を担保する証として。
大道塾の黒帯は、色々な意味で「強さ」を担保する証として。


いずれにせよ、多人数と戦う意義は大きい。





だが、この連続組手、昇段審査以外でも行われることがある。
それは






送別十人組手






確かに送別してくれるのはありがたい。
だが、何も惜別の情を込めて「殴る」必要は無かろう。
全く意味が分からない。





大学卒業時にも十人組手。


ずらりと並んだ1年生から4年生。

おいおい、そもそも十人ぢゃないだろソレ。

同期は勿論、後輩まで鬼の形相で殴りかかってくる。
白帯の一年生までモノノケに取り付かれたように突進してくる。



つか、おかしいだろ。



後輩にそんなに恨まれる覚えは全く無い。
否、恨みがあったとしても、最終日にこの仕打ちは無かろう。
しかもそんな日に限って、卒業アルバムの制作会社が撮影に来ていたりする。


後日写真を見ると、「ムンクの叫び」と化したオレが一方的に殴られているモノばかり。





転勤時にも十人組手。


大体、転勤直前なんて引継ぎやら送別会やらで、道場に行ってる場合ぢゃないだろ。
しかも異動が多いオレは、転勤のたんびにコレやらなあかんのか???

だが、実際はアメリカに赴任するときも、名古屋に行くときも、東京に帰任するときも・・・。
名古屋から東京に帰るときなど特に酷かった。



つか、おかしいだろ。



道場生にそんなに恨まれる覚えは全く無い。
大体、いつも日曜の午前中なんて道場生ぱらぱらしか来て無いじゃん。










何で道場の入り口まで人が溢れてるんだよ!










愛情の表現方法は、国、文化、風習、あるは個人によって異なる。
故に、これらはやや特殊な愛情表現だと言えよう。

間違っても「お礼参り」ではない。




オレは忙しい。
愛され過ぎて怖くなる・・・ヒマもない。
by hidetoshi_ota | 2008-08-17 08:33 | 格闘技
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